（マドレーヌの由来）

『マドレーヌ』はフランス語で（madeleine）と書きます。フランスで生まれた伝統菓子の一つです。マドレーヌの誕生には諸説あります。有名なものの一つをご紹介します。１７５５年、ロレーヌ公スタニスラスが催したパーティでの出来事。厨房で口論となった末、出て行ってしまったパティシエの代わりに、メイドの「マドレーヌ・ポルミエ」が祖母から教わったケーキを焼くことになりました。ホタテの貝殻で焼いたこのケーキを大層気に入ったロレーヌ公が、その女性の名前、『マドレーヌ』を付けたという話です。

（マドレーヌ・オランジュが出来るまで）

昔、わたしが働いでいた都内のパティスリー（ケーキ屋さん）では、丸っこい貝の型をしたマドレーヌを作っていました。配合は、バター、砂糖、卵、粉を基本とし、その中にサラダ油や水飴、レモンの皮、バニラ等を加えてしっとりさせた風味豊かな美味しい「マドレーヌ」でした。

私の中に「お菓子作りルール」があります。その一つに、修業させていただいたお店のお菓子を、そのまま真似しないです。美味しいと思ったお菓子を真似することは、商品のラインナップを作る際、とても楽です。でも、私にお菓子を教えてくれた師匠や先輩が、そのお菓子を食べて嬉しいのかな？といつも思います。同じお菓子でも、配合や素材の種類を変えて「自分の味」を作ることを心がけています。自分で、配合や型、焼き方などすべて一から考えてお菓子をつくる、そして「自分の味」を生み出すことが、私にお菓子を教えてくれた人たちへの恩返しかなと思っています。

私は、マドレーヌらしいしっかりした味わいの中に、少し軽い食感、そして、しっとり口溶けがよいマドレーヌを目指しました。空気をたくさん入れ、生地をしっとりさせるために、アーモンドのペーストを入れたり、砂糖は保水性のある上白糖にしました。そして焼き型ではなく、厚みのあるカップで焼くことで、より水分を保ちしっとりした生地に仕上がり完成しました。

次に、味はオレンジを選択しました。出来上がった生地に、しっかりと煮詰めた自家製のオレンジジャムをぬり、オーブンで乾かします。名前の『マドレーヌ・オランジュ』の「オランジュ」はフランス語で「オレンジ」あらわします。

最後に、食感をプラスします。オレンジジャムの上に、グラスアロー（粉糖にオレンジをくわえたもの）をかけ結晶化させ、オーブンにいれパリっとさせました。

この『マドレーヌ・オランジュ』は、軽くてしっとり、風味の主張、そして食感の驚きを表現したお菓子となっております。試行錯誤の末、私が考え作りましたと自信をもって言えるお菓子に仕上がりました。